CLASSIC AUTO TRANSMISSION ARCHIVE

GM Turbo-Hydramatic

TH350トランスミッション完全ガイド
搭載車種・型式の見分け方・OHキットと費用

旧車整備・部品の現場で得た知見をもとに、やさしく解説します。

旧車に乗っていると、ミッションの部品を探す段になって「英語」と「型式」の壁にぶつかります。なかでも相談が多いのが、GMの名機オートマチック TH350(Turbo-Hydramatic 350)。タフで多くの旧車に積まれている反面、不調が出ると「自分のがTH350なのか」「どのオーバーホールキットを買えばいいのか」でつまずきがちです。この記事では、型式の見分け方・よくある不調・OHキットの選び方・米国と国内の価格差を解説します。

TH350とは

TH350は、GM(ゼネラルモーターズ)が 1969年に導入した3速オートマチックトランスミッションです。2速「パワーグライド」に代わる主力として、シボレーをはじめGM各ブランドの幅広い車種に搭載されました。構造がシンプルで頑丈、部品の流通も豊富なため、旧車のオートマとしては“直して長く乗れる”代表格です。

どの車に載っているか(搭載車種)

TH350は 1969〜1984年、GMのRWD(後輪駆動)車を中心に幅広く搭載されました。

ブランド代表車種
シボレーカマロ/シェベル/ノヴァ/モンテカルロ/エルカミーノ/コルベット/インパラ/カプリス/マリブ
ポンティアックファイアバード/グランプリ/ルマン/テンペスト
オールズモビルカトラス/442/デルタ88/カスタムクルーザー
ビュイックリーガル/スカイラーク/ルセイバー/センチュリー
GMC / シボレーライトトラック・バン(2WD中心)

年代の節目:1969 導入/1979後期 TH350C 登場/1981頃〜 700R4へ移行/1984 最終搭載年

自分のミッションがTH350か見分ける方法

まずオイルパンの形で当たりをつけ、刻印で最終確認します。

① オイルパンの形状

型式ボルトパン形状
TH35013本四隅の角を落とした、比較的均整の取れた形
TH40013本片側に大きく張り出した独特の形
⚠ ここが最重要TH350とTH400はどちらも13本ボルト。本数では区別できず、「形」で見分けます。間違えるとキットを丸ごと間違えるため、最も注意したいポイントです。
TH350とTH400のオイルパン形状の比較図。どちらも13本ボルトだが、TH350は四隅の角を落とした比較的均整の取れた形、TH400は片側に大きく張り出した独特の形で見分ける。
TH350とTH400はボルト本数が同じ(13本)。形で見分けるのが確実。

参考:C4=11本/727・A904・FMX=14本/C-6=17本/パワーグライド=14本アルミケース

② 刻印・識別コード

刻印位置は年式で異なります。

読み方(例:P9E03)= P:製造工場/9:モデルイヤー下一桁/E:5月(A=1月…E=5月)/03:3日

判断の注意年下一桁だけで年式は断定できず、ケース形状・車両年式・適用車種と照合が必要です。ケースの鋳造番号(キャスト番号)は識別コードとは別物なので混同に注意。

TH350のよくある不調

多い順に、変速不良・滑り → 前進/後退のつながり不良 → シフトショック・遅れ。TH350Cはロックアップ系の不具合も加わります。

症状まず疑う原因確認
滑る・回転だけ上がるクラッチ摩耗/油圧不足/フィルター詰まり/フルード不足フルード量と色、パン内の異物
D/Rが遅い・入らない低油圧/バルブボディ汚れ/内部リークフィルター、バルブボディ
シフトが変・ショックモジュレーター/シフト調整/ガバナーバキュームホース、リンケージ
熱で悪化フルード劣化/クラッチ摩耗/ポンプ弱り温間で再現
(TH350C)ロックアップ不良配線/スイッチ/ソレノイド/油圧ロックアップ回路

現場で見る順:①フルード量と色 → ②パン内の異物 → ③フィルター → ④バキューム/モジュレーター → ⑤シフトリンケージ調整 → ⑥(350C)ロックアップ

軽い不調はフルード・フィルター・モジュレーターの交換で直ることも。滑りが進む/熱で悪化なら、クラッチ・ポンプまで含めたオーバーホールが必要です。

TH350オーバーホールキットの選び方

キットは「何が含まれるか」で4段階に分かれます。

グレード含まれるもの向いている状態米国価格の目安※
Overhaul Kitガスケット・シール・Oリング類のみ軽い漏れ・予防整備約 ¥7,800〜10,200
Banner Kit+フリクションクラッチプレート滑りが出始めた約 ¥15,000〜19,700
Master Kit+スチールクラッチプレート本格的なOH約 ¥23,000〜29,700
Deluxe / Super Kit+フィルター・バンド・ブッシュ・モジュレーターフルリビルド約 ¥28,000〜37,500

※海外パーツ通販掲載の参考価格(円換算)。為替・在庫で変動します。

症状から選ぶ目安:漏れだけ→Overhaul/滑り出し→Banner以上/本格的な滑り・熱で悪化→Master・Deluxe

⚠「TH250と共通」のキットに注意「Fits TH350 or TH250」のように複数型式に対応するキットがあります。型式を正確に把握しないと、合わないキットを買ってしまいます。だからこそ、最初の「型式の見分け」が全ての出発点です。

部品代、米国と国内の差

① キット(部品)の価格

海外のパーツ通販では、Master Kit(クラッチ込み)が 約¥25,000、シール類だけのOverhaul Kitなら 約¥8,000〜。一方、国内で同等の新品キットを探すと、流通が少なく割高だったり、納期がかかったりします。中古オークションの相場は約¥13,500ですが、内容や状態はまちまちです。

② 専門店にフルオーバーホールを頼む場合

国内のアメ車専門店でフルOH(工賃込み)を依頼すると、相場は ¥80,000〜300,000。本格的なOHでは¥200,000を超えることもあります。

整理すると部品の「調達」だけなら、海外直で大きく下げられます。ただし取付・調整・保証は別。そして最も大事なのは 「正しい型式のキットを選ぶこと」。間違えれば安物買いの銭失いになります。

まとめ:TH350で困ったら、まず「型式」から

進め方: 型式を確定 → 症状から必要なキットを見極め → 正しい品番で調達 → 信頼できる工場で取付

旧車のオートマは、正しく見極めれば、まだまだ長く乗れます。